夫婦げんか、兄弟げんか、お酒が入っている状態でつい、カッとなって…。けんかが起きる原因や状況はいろいろですが、場合によっては犯罪となり逮捕されるかもしれません。
今回はけんかをした際、どんな時に罪になるのか、どんな罪に問われるのかを解説します。
吹っかけてきたのは相手だったのに、正当防衛だといった主張はけんかの場合は通用しないようです。
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けんかをすると犯罪になる?
けんかをしても身内であれば社会に迷惑は掛けていない、けんかで殴り合ったりしてもお互いさまだから罪にはならない―。
そう思っているのであれば、認識を改めた方がいいでしょう。たとえ相手に非があっても、お互いさまでも人を傷つければ罪に問われることがあります。
また、身内や家族でもドメスティックバイオレンス(DV)と判断されることも。
後でも述べますが、けんかで暴行罪や傷害罪で逮捕される可能性はあります。
けんか両成敗が基本
「相手が先に手を出した」「やられたので、やりかえした」という理屈は法的には通りません。
けんかの原因が相手にあったり、酔っ払いなどに絡まれたりして、けんかになった場合でも、相手にけがをさせるとけがをさせた側が加害者となってしまうのです。
また、けんかの場合は一方的な被害は考えづらく、お互いに殴り合うことが多いはず。
殴り合いでお互いにけがをした場合もけんか両成敗となることが多いのです。
けんかだと正当防衛は認められないことが多い
けんかで正当防衛は認められるでしょうか。刑法では次のように定められています。
(正当防衛)
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
つまり、違法な行為で差し迫った緊急性があり、自分や他人を守るために反撃した場合は正当防衛が認められるかもしれません。
しかし、けんかの場合はお互いに殴ったり、蹴り合ったりしているはずで、正当防衛は成立しないと考えた方がよさそうです。
ひだかあさん
けんかで問われる可能性がある罪とは
けんかをした場合、どのような罪になるのでしょうか。可能性のある罪について解説します。
暴行罪
暴行罪は、暴行を加えたが傷害(けが)が生じなかった時に成立し、暴行を加えて傷害(けが)が生じた時には、傷害罪が成立します。
暴行罪は、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と定められています。
傷害罪
傷害罪は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。
傷害の内容もけがをさせるだけではありません。精神的なダメージや、性病を隠して性交を行って性病をうつすというのも傷害にあたります。
故意か過失かによって過失傷害という場合もありますが、けんかの場合は故意と判断されるケースがほとんどです。
暴行罪と傷害罪の違いは
暴行とは「人の身体に対し不法に有形力を行使すること」で、殴る、蹴るだけではなく胸ぐらをつかむ、突き飛ばす、水をかけるなどの行為です。
このような暴行の結果、被害者にけがをさせると「傷害罪」となります。
法的に「傷害(けが)」とは「人の生理機能を害すること」とされる説が有力です。
一般的な事件では傷害罪で起訴されるかどうかの分かれ目は、全治1週間前後が多いようです。
器物損壊罪
喧嘩で相手の物を壊したり、店の備品を壊したりした場合は器物損壊に問われ、
「3年以下の懲役、30万円以下の罰金」となります。
駆け付けた警察官に手を出すとどうなるか
けんかをしているのが通報されて警察官が駆け付け、けんかを止めに入ったが興奮状態の当事者が警察官に手を出した場合、公務執行妨害となります。
またパトカーを蹴るなどの行為も公務執行妨害。公務執行妨害は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」に課せられます。
警察官にけがをさせてしまえば傷害罪となります。
けんかで逮捕されるのはどんな時
逮捕は人の自由を奪うことですから、簡単にはできません。
法律にのっとった手続きが必要ですし、以下の要件がないと逮捕はされないことになっています。
- 罪を犯したと思われる相当な理由
- 逃亡の恐れがある
- 証拠隠滅の恐れがある
- 住所不定
けんかでの逮捕はけんかの現場を見た人が通報しての現行犯逮捕、けがをした人が警察に被害届を出した場合などが考えられます。
逃亡の恐れがあるためか、見知らぬ者同士のけんかは身内や仲間内のけんかより逮捕されることが多いようです。
罪を軽くしてもらう方法
ほとんどの場合、けんかはついカッとなって…というのがほとんどでしょう。
相手のけがの状態やけんかになってしまった状況にもよりますが、反省しているのが分かれば早い段階で釈放されることも多いです。
また、相手にけがをさせてしまったり、物を壊してしまったりした場合は示談し、示談が成立していれば不起訴にしてもらえる可能性もあります。
必要があれば、弁護士に相談するといいでしょう。
ひだかあさん
警察官、検察官又は裁判官に「当番弁護士を呼んでください」と言えば、弁護士会に連絡してくれ、当番弁護士が面会に来てもらえます。
家族から弁護士会に連絡して行ってもらうこともできます。