刑務所から出所後、生活はできる?再犯防止の鍵は住まいと仕事と定着支援

 2016年に「再犯の防止等の推進に関する法律」が施行されました。なぜ、このような法律が制定されたのか?それには理由があります。刑務所などの矯正施設から出所した人たちが再犯する割合が高いからです。

令和元年の犯罪白書によると、刑務所に入所する受刑者のうち、再犯して再入所する受刑者の人数は、平成元年から平成18年まで増え続け、その後減少しています。しかしながら、刑務所に入る人の総数も減っているため、再入者率は平成15年頃は約5割であったものが、徐々に上昇し、平成30年には約6割となっています。

刑務所では再犯を防止するための教育も行われていて、出所後に再犯する人の数も減ってはいるのですが、それでもなかなかゼロにはなりません。その背景には様々な要因があると考えられます。そこで、今回は刑務所から出所後の生活に目を向けて再犯防止のために必要なことを考えていきます。

再犯で刑務所に戻る人の7割は無職

令和元年版犯罪白書によると、出所したものの、再犯し再び刑務所に戻った再犯者の7割が無職でした。また、2割が住む場所がありませんでした。

また、平成29年版犯罪白書によると、5年以内に刑務所に戻る再入所率が高いのは覚せい剤取締法違反で48.9%、次に窃盗が44.6%。支援してくれる人がいなければ薬物依存から抜け出すのは難しいこと、仕事がなく収入を得られなければ再犯につながることを表す数字ではないでしょうか。

仮釈放より満期釈放での出所が厳しい

刑務所には懲役または禁錮の実刑判決を受けた者が入りますが、刑務所から出所する際には主に仮釈放と満期釈放の2つのパターンに分かれます。

仮釈放は刑務所での処遇経過が良好で改善更生する意欲もあり、出所後に身元を引き受けてくれる人も確保されている場合に刑期が終わる前に刑務所を出所することが認められます。

その際、基本的には刑期が終了するまでの残りの期間は保護観察が付き、保護観察所と保護司による指導監督を受けることになり、その仮釈放後の経過も良好な場合は刑期が終了する前に保護観察が解除されることもあります。

他方、刑務所での処遇経過が良くなかったり、改善更生への意欲が認められなかったり、出所後の身元を引き受けてくれる人がいないような場合は仮釈放が認められず、受刑者は満期で釈放されることになります。

満期釈放の場合は保護観察がありません。刑務所の中では刑が課され生活も管理はされますが衣食住の心配なく生きていけます。しかし、出所した後、社会の中では自分で衣食住を賄えないと生きていくのは困難な状況になります。 仮釈放になる人に比べて満期釈放者は保護観察という縛りがなく楽だという受け止め方をする人もあります。

自分で生きていける人の場合には自ら望んで満期釈放の道を選ぶ人もあるのですが、仮釈放で早く出所したくても刑務所での処遇状況が悪かったり、処遇状況は悪くなくても身元引受人になってくれる人がいなくて満期釈放になるような人の場合には、色んな不利な状況に追い込まれがちになります。

受刑者の中には、一人で生活をしたことがなく、家計のやり繰りや部屋を借りる際の手続きなどをしたことがない人も大勢います。また、前科があると差別を受けることもあります。頼れる人や身内などがいなければ、困ったことがあっても相談先がない状況になります。

また、満期釈放になる人の中には、働く意欲や就労技能が乏しい人や、地道に働いてお金を稼ぐという習慣が身に付いていない人もいて、犯罪によって生活しようとしたり、社会で生活するよりも刑務所で暮らした方がましだと感じて再犯する人もいます。そうしたことのためか、満期釈放での再犯率は高く、2016年の出所受刑者総数の2年以内再入率は18.5%、5年以内再入率は38.6%と約4割の者が5年以内に再入所という結果になっています。

刑務所から出所後、生活はできる?

刑務所から出所後、生活が立ち行かず再犯、再び刑務所へという悪循環―。 再犯防止には出所後、社会の中で生活ができる環境を整えていく必要があります。その鍵となるのが仕事と住まい、それと社会生活への定着支援です。

前科があると社会の偏見もあり出所後の就職、住まいの確保は容易ではありません。そのため国も支援を始めています。 また、刑務所から出所する人の中には病気や障害がある、高齢で働けない人もいます。

このような出所者を放置せず、福祉のサービスにつなぐ支援にも力が入れられるようになり、『地域包括支援センター』を各地域に設けて支援する活動が始まりました。しかし、住む場所や仕事は提供したり、高齢者や障害者に対する支援体制は整えられつつあるものの、そうした支援を受ける対象となっていない人についても再犯することなく社会生活に定着していくための支援までは十分に行われていないのが実情です。  

出所後、就職はできるか

就職ができるかどうかは刑務所から出所した受刑者が立ち直り、生活していくうえでとても大切なことです。しかし、出所後の就職は厳しいのが現状です。2014年に犯罪対策閣僚会議が出した宣言の中でも「仕事に就いていない者は、仕事に就いている者と比べて再犯率が4倍と高いことが明らかになっている」と仕事の重要性に触れています。

国も出所後の就職支援をしており、刑務所などの矯正施設でも、職業訓練を行うほか、どういう犯罪で服役しているのかををオープンにすることを条件にハローワークと連携して就職支援を行っています。この取り組みは2006年度から始まり年々実績を上げており、2016年度は4,023人が支援を受け、受刑中に576人が就職を決めています。ただ、受刑する人の中には自らの犯罪について明らかにしたくない人もいるため、そういう人たちには仕事に関する情報を提供するような形での就労支援も行われています。

また、2016年、法務省が「コレワーク(矯正就労支援情報センター)」をつくり、ハローワークを通して受刑者と企業のマッチングの場を設けています。 民間でも日本財団(公営競技のひとつである競艇の収益金をもとに、海洋船舶関連事業の支援や公益・福祉事業、国際協力事業を主に行なっている公益財団法人)が2013年から「日本財団職親プロジェクト」を開始。出所後の受刑者を受け入れる企業を募っています。

関連記事:犯罪者は就職又は再就職できる?会社にバレる?前科者の就職支援は?   

出所後、住む場所はあるのか

出所後の住まいの確保も重要です。受刑者の中には帰る先のない者もいます。帰る先のない人には仮釈放は認められず、満期釈放となります。

ということは、刑務所の門を出れば保護されない状態になってしまいます。中には犯罪組織の人が待ち構えているようなことがあるかもしれません。

また、覚せい剤などの薬物依存がある受刑者は、帰属する場所や強い絆がない状況に置かれたり、二度と薬物には手を出さないという意思が持続しにくい状況に置かれた場合、出所すると些細なきっかけで再び薬物に手を出してしまうかもしれません。

窃盗や覚せい剤に限らず、再犯して刑務所などの矯正施設に再入所した犯罪者の約2割が住む場所がない状態であることが分かっています。 そこで、国も出所後の住居の確保を支援しています。

刑務所から出所する前から保護観察所が帰住先を調査、調整し、薬物依存者の場合は回復を支援している団体へ受け入れを求めるなどの調整をしています。ほかには受け入れ先となる親族や就職先の雇用主への支援、行き場のない出所者を一時的に受け入れる場を増やすなどの支援をしています。

また、地方自治体にも、公営住宅へ優先的に入居できるよう配慮を求めています。

出所後、相談に乗ってくれる人はいるのか

出所後仕事も住む場所もあるのにもかかわらず、再犯する人がいます。せっかく仕事や住む場所があっても、そこから離れてしまう人もいます。

また、一定の住居に住んで仕事を続けていながらも再犯してしまう人もいます。服役する以前から働く意欲の乏しい人もいれば、最初は働く気持ちはあったのに、世間から冷たくあしらわれたり拒絶されたりするうちに働く意欲を低下させていってしまう人もいます。

そういう人にとっては、人との接触そのものがストレスになったりすることもあり、犯罪から得られる一時的な快感を味わうことでストレスを発散しようとすることもあるのです。一方、福祉的な施設に入って、特に人との接触がストレスになっているという訳でもないのに、金銭を得たいという欲求からそうした福祉施設の中で盗みを働いて、そこにいられなくなるような人もいます。

住む場所や仕事があるだけでは解決できない問題もあるのです。そのような問題に対して地域ぐるみで刑務所からの出所者を受け入れ、支えていけるような仕組を作ったり、そういう人を支援する専門的な人を配置して、支援を行ったり、再犯しにくい環境を整えていくことができれば、再犯を防げる可能性が高まります。

特に服役後刑務所を出所しても短期間のうちに犯罪を繰り返して何度も服役するような人に対してこそ、服役しているときから社会生活になじむための方策を検討し、刑務所の中と外をつなぐような支援が必要になってきます。

ソーシャルワーカーや臨床心理の専門家、あるいは環境心理学者などと行政が協力して、そういう仕組を作っていくことが必要ではないかと考えます。

再犯を防ぐために

犯罪は減少傾向にあるものの、犯罪の検挙人数に占める再犯者の割合は年々高くなっています。見方を変えれば、再犯を減らすことによって、犯罪を一層減らすことも可能であると言えます。

刑務所から出所後は、犯罪者も一人の市民として生活をしていかなくてはなりません。仕事と住む場所がなければ、生活していくことができず、再犯する可能性が高まります。さらに、それらに加えて社会の中で生じる様々な問題に対して支援を行い、社会生活に定着していくように働き掛けを行っていくことが大切です。前科があっても卑屈になったりストレスをためたりせず、現実に向き合って暮らしていけるように出所者を支える。そのような社会ぐるみの取組が必要とされているのではないでしょうか。

ひだかあさんのコメント

安全で安心な暮らしができるようにするためには、再犯を減らすことが肝要です。そのためには出所後、しっかりと立ち直れるよう、対象者が矯正施設に入っているときから出所後まで一貫して支援を行っていくことが必要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です