飲酒に喫煙、夜遊び、万引き―。一口に「非行」といってもさまざまな問題行動があります。
「非行」が悪いことだと子どもも分かっているはずですが、子どもが問題行動を起こし、非行に走ってしまうのはなぜなのでしょうか。
子どもが非行に走るのも原因があります。
今回は非行少年らがどのような家庭環境で育ったのか、どんな風に育てられたのかに着目してみたいと思います。
Contents
なぜ非行に走る?非行少年の心理
「ちゃんと叱ってほしかった」。非行に走り罪を犯してしまった少年院の子どもたちがそう漏らすそうです。
多くの子どもたちは悪いことをしたら叱られるということを体験的に知っています。親や養育者が忙しすぎて子どもに構えなかったり、放任だったりした場合、寂しさから気を引こうと非行に走る子どもは少なからずいます。
逆に親や養育者が厳しすぎた場合、「親(養育者)から離れたい。逮捕されれば離れられる」と事件を起こしてしまうケースもあります。
10年程前に 内閣府が行った非行に関する調査によると、「親から愛されていない」「親が厳しすぎる」「親は家の中で暴力をふるう」と回答する非行少年は一般の少年に比べて多いという結果になっています。
親や養育者に愛されていない、理解してもらえない、大事にされていないと思ったときに、子どもは非行に走りやすくなるのかもしれません。
参考URL 第4回 非行原因に関する総合的研究調査(平成22年5月内閣府)
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikou4/gaiyou/gaiyou.html
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikou4/html/html/mokuji.html
非行少年のパターン
非行少年にもパターンがあります。
主なパターンはつっぱりや暴走族など分かりやすいタイプと、これまで問題が目立たない「いい子」だったのに、ある日突然変身してしまうタイプ。
また一時期引きこもった後、世間を驚かすような事件を起こすタイプ、自傷行為を行ったり薬物非行に走ったりするパターンもあります。
今回は非行の主なパターンを詳しく見てみましょう。
パターン1 攻撃が外へと向かうヤンキー・つっぱりタイプ
昔からいる分かりやすい不良タイプ。親その他の養育者から放任されていたり暴力的な態度で育てられていることが多いです
。褒められたり、受け入れられたりする経験が少ないため、攻撃的で大人に対する不信感が強く、大人への反発から非行に走りますが寂しさを抱えていて大人の気を引きたいという側面もあります。
不良仲間と一緒になって「暴走族」などのグループをつくることもありますが、最近は大きな集団で行動するのを面倒だと感じる者も多く、2、3人でゲリラ的な暴走を行うケースもあります。
パターン2 抑圧された「いい子」タイプ
一見、何の問題もなく育った普通のいい子が突然「キレて」事件を起こす―。
最近の凶悪な少年犯罪で時々見られるケースです。親が厳しすぎたり、過度に構われたりすると子どもは自分の欲求や感情などを表したり、試行錯誤して失敗する中で学ぶといった経験が乏しいまま成長します。
抑圧に耐えられなくなったり、体験したことのない挫折に直面したときに問題や事件を起こしてしまうタイプです。
事件を起こす前に学生生活や社会生活からの引きこもりの時期を経験する者もいます。
ひだかあさんのコメント
非行と家庭環境
こんな家庭だから非行に走ると一概にいうことはできませんが、親が生活していくのに精一杯で子どもに構ってやれない家庭や、社会のルールや法律を守ることの意味を子どもに理解できるように教えたり、子どもが人を傷付けたりした場面で厳しく叱ったり説諭したりすることもないといった家庭の子どもは規範意識が内面化しにくく、非行に走りやすい傾向があります。
子どもが健やかに育つには、優しく子どもを包む母性と、社会の厳しさを教える父性の両方が必要です。これは、実際の家庭に両親がそろっているかいないということではありません。
片親であってっも、親がいなくても養育する人との関係で、子どもが厳しさや優しさを体験したり、尊重されたり役割を与えられたり個性を認められたりしているかということが重要です。
乳幼児期に愛情をしっかり注いでもらって承認欲求が満たされると精神的に安定し、しっかりとした土台ができます。
しかし、愛されず、受け入れてもらうという経験がなく、精神的な土台が育たず、自分の欲求がコントロールできない子どもになりがちで、罪を犯すという結果につながることもあります。
また、甘やかされるだけでしつけられず、我慢するという訓練ができないまま成長すると社会のルールを守ったり、自分の欲求を抑えたりすることができなくなってしまい、犯罪に手を染めやすくなってしまうのです。
非行少年の親養育者の態度
実際には特定のパターンに当てはまることは少ないのですが、典型的なものを取り上げると非行少年の親(養育者)の主なパターンと子どもへの影響は以下の通りです。親を反面教師として立派に成長する子どももいますが、非行に走るリスクは高くなります。
- 放任、無関心 →寂しさから非行に走る、しつけが受けられない
- 溺愛 →社会のルールが守れなくなる、我慢ができなくなる
- 過度に厳しい →自分を生きられなかった不満が爆発しやすい
- 規範意識に乏しい →犯罪への親和性が高くなる
- 暴力を振るう →暴力への親和性が高くなる
上記のような養育者に育てられると心が満たされなかったり、しつけも受けられなかったために社会のルールを教えてもらえずに非行に走ったり、罪を犯したりしやすくなってしまいます。
子どもの非行を防ぐために
きちんと子どもに向き合い、愛情を注ぐ。しつけをし悪いことは叱る。その際、理由も説明する。この2点が大切です。
子どもは、自分が大切にされていると感じ、適切なしつけ教育を受けていたら、親や周りの大人をむやみやたらに裏切ることはありません。
非行少年の多くは、犯行時に親の顔は浮かんだかと尋ねても、「いいえ」とか「浮かばなかった」と答えます。
都合よく忘れていたのかもしれませんが、親との心のつながりが希薄だと、良心が育まれず、自分中心的な判断で行動した結果、非行に走ってしまうのかもしれません。
子どもが自分は大切にされていると実感できるよう、しっかり向き合って話を聞く、悪いことをしたらしっかり叱って規範意識を育てることが非行や犯罪に走ることを防ぎ、子どもを守ることにつながるのではないでしょうか。
子どもに自分の考えを押しつけ過ぎていないかにも注意することが必要です。子どものために良かれと思ってしたことも、行き過ぎるといつかはひずみが生じ、とんでもない結果を招くこともあります。
また、愛情を持って子どものしつけ教育を行う一方で、子どもの個性を尊重し、友人や親以外の大人との関係を積極的に持たせることも大切です。家族との関係が基本にはなりますが、家族以外の人との人間関係を持つ中で、共感性や思いやりが育まれます。
ときには子どもが困難な状況に出会うことがあるかもしれませんし、親が介入することが必要な場面があるかもしれませんが、基本は子ども自身が自分で解決することができるように子どもの話を聴き、気持ちを支え、信頼して待つ気持ちでいることも大切です。