少年院に入る理由とは?少年院の存在意義と実施される5つの教育活動

 

一度は耳にしたことはあるであろう少年院。犯罪を犯した未成年者が罰せられるところ、あるいは未成年者が収容される刑務所だと思っている人も多いのではないでしょうか。

罰則のイメージが強いものの、本来の目的は少年の健全育成のための教育を行い、少年の更生を促すことです。

そこでこの記事では少年院について、

  1. 少年院の存在意義
  2. 少年院で行われる1日の教育
  3. 少年院に入る理由

以上の3つについて紹介していきたいと思います。少年院のスケジュールや鑑別所との違いについてなども合わせて紹介していくため参考にしてみてください。

少年院とは

少年院とは、非行を犯して家庭裁判所に事件が送られた者のうち、審判で少年院送致決定を受けた者を収容して矯正教育を行う国立の施設です。

少年院には、懲役又は禁錮の刑を受けた16歳未満の少年受刑者も収容されることになっています。

対象となる年齢・少年院内の施設・1日のスケジュール・少年院の数など、あまり知られていない実態を深掘りしていきます。 

少年院に入る対象年齢

少年院に収容される際の年齢は12歳から20歳未満で、少年院に入っているうちに20歳を超える場合もあります(最長26歳未満)。

しかし、非行を犯した12歳〜20歳未満の者、全てが少年院に入るのではなく、家庭裁判所の審判で少年院送致決定を受けた者のみとなります。 

少年院内にある設備

少年院の施設により多少設備は違いますが、居室(平日の夜間や休日などに過ごす部屋のことで、単独室と集団室があります。)・お風呂・学習室・図書館・職業指導室・体育館などがあります。

先ほども言いましたが、あくまで自分の行いを反省し、社会に復帰できるように再非行を防止するためのプログラムや教科教育、職業能力を高めるための訓練などを受ける施設となっています。

ですから、刑罰を受けるための施設というものではありません。最近は、刑務所でも再犯を防止するための指導にも力を入れるようになっているため、刑務所が少年院に近づいてきたとも言われています。

少年院の5つの種別

2022年4月からそれまで第4種までであった少年院に第5種が追加されました。

  • 第1種少年院 
    保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満のものを収容する。
  • 第2種少年院 
    保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね16歳以上23歳未満のものを収容する。
  • 第3種少年院 
    保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のものを収容する。
  • 第4種少年院 
    少年院において刑の執行を受ける者を収容する。 
  • 第5種少年院 
    「特定少年」である者が2年の保護観察処分となった上で,保護観察の遵守事項に対する重大な違反があり,少年院における処遇が必要とされる場合に該当するものを収容する。 

少年院での1日のスケジュール

施設により多少スケジュールに違いがありますが、一般的には以下のようにとなります。

6:30(7:00) 起床・役割活動
7:40 朝食・自主学習等
8:50 朝礼
9:00

生活指導、職業補導、
教科指導、体育指導、
特別活動指導、運動等

12:00 昼食、余暇等
13:00 生活指導、職業補導、
教科指導、体育指導、
特別活動指導、運動等
17:00 夕食・役割活動
18:00 集団討議、教養講座、
個別面接、自主学習、
日記記入等20:00
余暇等(テレビ視聴等)
21:00 就寝(特別に許可された
場合は22:00に就寝)

少年院から出た後も、規則正しく生活が送れるよう、早寝早起きが徹底されています。

また、年齢によっては社会に出た後、すぐに定職に就けるよう、資格取得に向けて勉学に励むことも可能です。 

全国にある少年院の施設数

少年院は全国で約46か所(うち6か所は分院)です。うち女子少年院は9か所です。少年院は各都道府県にあるわけではなく、家庭裁判所の審判で決められる少年院の種類や性別、収容される者の特性等に応じて、送られる少年院が決められます。

そのため、必ずしも保護者や身元引受人の住所もから近いところにある少年院に収容されるというわけではありません。

ですから、「すぐ近くに少年院があるのに、なぜ遠くの少年院に送られるの?」と不便に思われる親御さんもおられるかもしれませんが、より効果的な教育を受けさせるためだと御理解くださいね。

少年院に入る理由と犯した罪とは

少年院に収容される人の犯した罪としては、約40%ほどが「窃盗」、約20%が「傷害」、それぞれ10%が「薬物」「虞犯(ぐはん・罪を犯す恐れがあること)」、その他横領、住居侵入などです。

年齢や犯罪の重さによっては少年院ではなく、少年刑務所に収容される可能性もあります。

少年院内で行われる5つの教育活動

少年院で行われる教育活動は大きく分けて5つ。

  1. 生活指導
  2. 職業指導
  3. 教科指導
  4. 体育指導
  5. 特別教育指導

が行われます。

生活指導では自立した生活を送るための基本的な知識や生活態度を身に付けるための指導が行われています。

その中で一人一人の問題性の改善に向けたプログラムも行われています。職業指導では勤労意欲を高め、職業上役に立つ知識や技能を身に付けるための指導を行っています。

パソコン科や電気科、溶接科、クリーニング科などのコースに分かれ、溶接やパソコン、危険物取扱者などの資格取得に向け専門的な知識を学ぶために時間を使います。教科指導では、義務教育や高校への進学を希望する者への指導を行っています。

また、希望する者には高等学校卒業程度認定試験を受験する機会もあります。

体育指導では基礎体力を高めるための運動やトレーニングを行います。そのほか、運動会などの行事もあります。基礎体力を高めるための運動やトレーニングを行います。そのほか、運動会などの行事もあります。

少年院と少年鑑別所・少年刑務所のそれぞれの違いは

少年院は少年の健全育成のための教育を行い、更生を促す施設であるということを紹介しましたが、少年鑑別所や少年刑務所との違いについて、今一つよく分からないとか、少年院と少年鑑別所のことがごっちゃになっているという方もおられるかもしれません。

さらに、少年院と少年刑務所ってどこが違うのだか、さっぱり分からないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、少年院と対比しながら少年鑑別所と少年刑務所について簡単に説明します。 

少年鑑別所

少年鑑別所は各都道府県に1つ以上設置されていて、全国で52か所(6庁は支所)あります。少年鑑別所では、主に家庭裁判所で観護措置がとられた少年を収容して、心身の鑑別(よく調べること)を行います。

観護措置の収容期間は2週間で通常は1度更新されて4週間、特に必要な場合は8週間まで延長されます。その期間中に家庭裁判所の審判が行われ、個々の少年の処分が決められます。

その保護処分の中の一つが少年院送致です。少年鑑別所では家庭裁判所調査官による調査や付添人(通常は弁護士)による面会、家族や学校、職場関係者による面会なども行われます。

運動や入浴、読書、貼り絵、教科指導、教養講座などの機会もあります。少年鑑別所には、相談の項目でも紹介しているように、『法務少年支援センター』が併設されており、地域の方からの相談に応じたりもしています。

少年鑑別所では、少年にとってふさわしい処分を決定できるように、少年らしさが失われないように配慮した働き掛けが行われます。その点は、教育に力点が置かれる少年院とは違います。 

少年刑務所

少年刑務所は刑務所や拘置所と同じ刑事施設のグループに入ります。その点は、少年矯正施設のグループに入る少年院や少年鑑別所とは異なります。

少年とつくので未成年者だけを収容するのではないかと勘違いする方もありますが、未成年から本来は26歳未満の懲役又は禁錮の刑が確定した受刑者を収容して服役させるとことで、全国に6か所しかありません。

少年刑務所と言っても、実際には服役する大人の人数が多く、26歳未満の受刑者の数が少ない関係で、26歳以上、中には高齢の受刑者も収容しているのが実情です。

少年刑務所では服役させながらも、再犯を防止するための教育にも力を入れて処遇しています。服役させながらという点が少年院とは異なっています。

まとめ:少年院はあくまで更生を図る施設

少年院というと「罰せられる」というイメージを持っていた方も多いと思います。しかし、あくまで少年院は、非行から脱却して社会生活に適応できるように教育する場所。

せっかく少年院で勉強し、立ち直ると決めて社会に戻っても、家族や親類、地域の人たちから冷たい目で見られたり、避けられたりしたのでは、立ち直るのが困難になりかねません。

少年院、あるいは少年院から出た少年への理解を深め、温かい目で少年を見守り育てる意識や行動がとても大切です。家庭だけではなく、地域の人々も一緒になって少年が社会復帰しやすい環境づくりを行いましょう。

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