人はなぜ犯罪行動をしてしまうのか?そんな疑問に答えてくれるのが犯罪心理学です。
犯罪心理学は犯罪者の更生や、防犯、捜査などさまざまな場面で役に立っています。
今回は犯罪心理学に興味を持ち学んでみたい人、犯罪心理学に関係する仕事について知りたい人に、勉強できる本や大学の情報、犯罪心理学の知識を生かせる職業などをご紹介します。
Contents
犯罪心理学とはどんな学問か
犯罪心理学は、罪を犯したり、非行に走ったりした人がなぜ犯罪行動をしたのか研究する心理学の一分野で、応用心理学の一つに分類されます。
犯罪と人の心理は深く関わっていると考えられています。生まれながらの犯罪者はいません。犯罪に至るまでに、さまざまな生育歴や体験、失敗や挫折などがあります。
また、心身の病気を抱え苦しんだ末の犯行かもしれません。犯罪心理学はこうした犯罪者の行為や心理を、事例検討や統計調査などを用いて分析、研究する学問です。
研究の結果は犯罪の捜査、防犯、非行に走った少年や受刑者の更生に生かされています。
犯罪心理学と重なる部分もある学問には、犯罪学、犯罪社会学、司法精神医学などがあります。
プロファイリングも犯罪心理学の領域にある
プロファイリングは行動科学的な視点から捜査を補完する手段の一つで、犯行現場のさまざまなデータから犯人像を社会的・心理学的見地から推測します。
アメリカの連邦捜査局(FBI)で開発された手法で、犯罪者と犯罪行動の事例を綿密に研究し、カテゴリー化して犯人像を推測します。
プロファイリングにはFBI式のほかに、ほぼ同時期にイギリスで開発されたリバプール方式があります。
リバプール方式は、犯人の行動を統計的に分析して、そこから犯人の行動特性を明らかにして行こうとする方法です。
日本でも科学捜査研究所や科学警察研究所を中心に日夜プロファイリングの研究が進められていますが、埼玉県連続幼女誘拐事件、神戸連続児童殺傷事件の捜査などにおいてもプロファイリングの手法が用いられました。
犯罪心理学の歴史
犯罪者がどのような人間か実証的に検証し始めたのは19世紀後半、イタリアの精神科医ロンブローゾで犯罪者たちの身体的特徴や頭蓋骨を調査したのが始まりです。
ロンブローゾは犯罪者になる人間は身体的・精神的変質兆候が見られ、生まれたときから犯罪者になる運命だとする「生来性犯人説」を説きました。
しかし、生来性犯人説に対立し犯罪の原因として環境的要因を重視する犯罪社会学が生まれました。
犯罪心理学が、現在のような学問として確立されたのは20世紀に入ってから。フロイトの精神分析の確立が犯罪心理学の発展にも寄与しました。
ドイツの精神医学者シュナイダーは「精神病質論」を展開し、精神疾患に関する10類型をまとめました。これは犯罪者の精神分析にも用いられました。
1960年代、WHOによる国際的な基準の検討が始まり、現代ではWHOの国際疾病分類ICDやアメリカ精神医学会統計基準DSMが使用されています。
ひだかあさん
どういう心理で犯行に及んだのか?
そのような犯罪をなくすにはどうしたらいいか?
どうして人は犯罪行為をしたくなるのか?といったことを知りたくなる人も多いと思います。
犯罪心理学はそれらの疑問に答えてくれます。
犯罪心理学に興味がある人におすすめの本
犯罪心理学について書かれた本はたくさんあります。
たくさんの本が出版されていますし、専門的過ぎて読んでも理解できそうにない…と悩む人もいるかと思います。
どの本から読んでいいのか分からない人向けに、初心者でも読みやすく、わかりやすい入門本をご紹介します。
ただ、ここで紹介するのはほんの一部に過ぎないので、実際に本屋に出向いて自分で本を読んで気に入ったものを選ばれることをお勧めします。
1.面白いほどよくわかる!犯罪心理学(内山絢子 西東社)
イラストや図解を多く使い、読みやすく書かれた本です。
「犯罪とは何か?」といった初歩的なことから、犯罪が起きる原因を心理学的、社会学的に解説した項目やドメスティックバイオレンス、少年非行についてなどが学べます。
1項目2~4ページほどでまとめられており、わかりやすさと読みやすさを重視する人、犯罪心理学について一通り知りたい、幅広く知りたい人におすすめの一冊。
2.入門 犯罪心理学(原田 隆之 ちくま新書)
少年鑑別所や法務省矯正局で、実務家として犯罪者に向かい合ってきた著者の知見が反映された本です。
統計からみた日本の犯罪の実態、犯罪者の傾向、犯罪者の矯正のために知っておくべき心理学などが分かりやすくまとまっています。
3.司法・犯罪心理学(岡本吉生編 公認心理師の基礎と実践19(野島一彦他監修)遠見書房)
公認心理師を目指す人に向けて書かれた本ですが、多くの現場の経験のある専門家によって書かれていますので、少し専門的な内容が知りたい人にはお勧めの本です。
犯罪心理学を学べる大学は?卒業後の進路は?
犯罪心理学が勉強できる大学、犯罪心理学を勉強した後の進路については以下の通りです。
- 犯罪心理学が学べる大学
日本犯罪心理学会は同学会の会員が「犯罪心理学」の講座、研究室を開講している大学・大学院のリストを日本犯罪心理学会が公開しています。
ただし、大学によっては教員の転・退職等によって、研究室の状況が変化していることもあります。
せっかく入ったのに先生も研究室もなくなっていたというのではがっかりしますから、、進学を考える人は大学に直接確認するのが良いかもしれません。
日本犯罪心理学会のリンクはこちら
- 大学卒業後の進路
公的機関の専門職のほか、一般企業に就職することも多いようです。主な公的機関・専門職は以下の通りです。
それぞれに採用試験がありますが、専門的な内容のみならず、一般教養などの科目もありますので、公的機関の専門職を目指す人は、公務員試験対策をしっかりしておくことが必要です。
- 科学捜査研究所
全国の県警本部で科学捜査の研究・鑑定を行う機関。心理学関係ではポリグラフやプロファイリングなどを担当します。
県によってどの分野を担当するかは異なります。採用情報は各県県庁・各県警のホームページで確認できます。
- 科学警察研究所
国の機関である警察庁の付属機関で、犯罪科学技術の研究、依頼された証拠物の鑑定・検査、先述した科学捜査研究所の専門職員の研修を行う機関です。
ほかには犯罪を未然に防止するための立案などを行います。
- 家庭裁判所調査官
家庭裁判所が扱う家庭問題や非行についての調査を行い、裁判に使う資料をつくる仕事です。
離婚や親権問題では当事者を調査し問題の原因や解決策を調べます。
また、少年犯罪も扱い、罪を犯した少年の動機、生育環境などを調べ、裁判官が処分を決める資料をつくります。
- 法務省専門職員(矯正心理専門職、保護観察官、法務教官)
いずれも刑務所、少年鑑別所、拘置所などで働く専門職です。
矯正心理専門職は少年鑑別所や刑務所で少年や受刑者に各種心理検査を行います。
保護観察官は保護観察所などに勤務し、罪を犯した人が再犯せず社会復帰できるよう支援。法務教官は少年院や少年鑑別所で少年たちの立ち直りを見守る仕事です。
- 国家総合職(人間科学)
将来国家公務員の幹部として組織運営に関わる職務に就くことを前提に採用されます。
採用後しばらくは現場中心に仕事をしますが、比較的早い時期から下級幹部としての立場で現場の仕事にもかかわります。
その後は現場と中枢部を行き来ししながら上級幹部として職務を遂行するようになります。
そのため、ずっと現場で臨床的な仕事をしたいと思う人には不向きであるかもしれません。
ひだかあさん
参考URL
- 科学警察研究所の採用情報
https://www.npa.go.jp/nrips/jp/recruit/
- 法務省専門職員(人間科学)採用試験の案内
http://www.moj.go.jp/jinji/shomu/jinji05_00014.html
- 裁判所の採用試験情報、家庭裁判所調査官の採用についてここから
http://www.courts.go.jp/saiyo/saiyoujyouhounabi/index.html
- 法務省総合職(院卒者試験・大卒程度試験)
やはり大学を出てないとこの道へは進めませんか?
T.R.さん
家庭裁判所調査官や法務省の矯正心理専門職,各都道府県の科学捜査研究所などで犯罪心理学を活かした仕事をするためには,大学卒業又は卒業見込み,人事院がそれと同等と認める者となっています。一方,法務省の法務教官や保護観察官については,短期大学又は高等専門学校卒業程度以上となっています。
専門学校でも人事院が認めれば,短大以上となることもあります。いずれにしても,専門的な教育を受けている(必ずしも犯罪心理学でなくても良い)ことが必要なので,これから勉強をなさるのでしたら,事前によく調べておかれることをお勧めします。