児童に対して、周囲の人間が危害を加える虐待は、「許しがたい行為」と世の中で、認識されてはいるものの、児童虐待の相談件数は平成2年に1101件だったものが平成29年には133778件まで上昇しています。
この相談件数の増加の背景には,警察がDVの通報を受けて現場に駆け付けた際,そこに児童がいた場合に「面前DV」による心理的虐待の被害児童として児童相談所に通告するようになったことも影響しているようです。
このように,世の中で様々な対策が行われるようになった結果,虐待件数が増加した面もありはするのですが、対策がとられてもなお,虐待が原因で児童が死に至るケースが発生しているのが現状です。
そこで今回は、「虐待かも?」と思った際に通報先・相談の窓口となる、児童相談所全国共通ダイヤル「189」の存在と通報を行う境界線について紹介していきます。
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そもそも虐待の基準とは?
虐待とは周囲の人間が対象者に対し何らかのダメージを与える行為の総称です。虐待の対象が児童の場合は児童虐待と言われており、この児童虐待が世の中で問題視されています。
殴る・蹴るなどの身体的虐待の場合は、児童の外傷から虐待が発覚することもありますが、育児放棄(ネグレクト)や性的虐待・心理的虐待は発見が遅れてしまいます。
そのため、児童と頻繁に接する保育園や幼稚園の先生、近所の住人などが日頃の変化に気づいてあげることが鍵となるのです。
虐待を感じた際に通報すべき「189」の詳細と使い方とは?
児童相談所全国共通ダイヤルは以前10桁のダイヤルでした。しかし、いち早く児童を救いたいという思いから、「189(いちはやく)」と3桁の電話番号に変更になったのです。
「189」は警察に繋がる番号ではなく、発信した地域が管轄の児童相談所に繋がります。
電話先では児童虐待などに詳しい専門家が対応してくれ、現状のヒヤリングを行います。
100%虐待が行われてることを確認しなくても構いません。
証拠がなくても構いません。
少しでも「虐待かも…」「気になる…」と思った場合はすぐに「189」に連絡をしてみてください!
電話を書けると最初に1〜2分ほどのアナウンスが流れます。アナウンス終了後に通常の電話同様に相談所に繋がります。
ただし、赤ちゃんの泣き声がうるさいと感じた場合は注意が必要です。それは赤ちゃんは泣くのが仕事という面があるからです。
泣くことによって,肺が鍛えられる面もあるのです。ですから、その泣き方に注目する必要があります。
ポイントは「尋常じゃない泣き方」であるかどうかです。
もし近くに人がいたら、その人が聴いても尋常じゃない泣き方に聞こえるのかどうかも参考にしましょう。可能であれば泣き声を確かめに行きましょう。
通報された方の親御さんは、通報されたことで子育てに自信を失うようなこともあります。
更に悪くすると、泣き声が外に漏れないように赤ちゃんを布団蒸しにするようなことにもなりかねないのです。
そうした点を考慮してもなお「この泣き方、いくらなんでも普通じゃないよね」と感じたら通報しましょう。
通報の際に伝えるべき情報
「189」から児童相談所に電話がつながったとき、なるべく分かっている状況を簡潔に伝えることが大切です。主観的な内容ではなく、事実となる情報を伝えましょう。
分かる範囲で、
- 住所、又は「何というビルの何階のどの部屋から」とか、具体的な場所が分かるように伝える
そうでないと、ただ「子どもの泣き声か聞こえる」という情報だけでは場所が特定できない場合もあります。できれば,現場に足を運んでできるだけ詳しい情報を伝えましょう。
- どんな現象を感じたか
- もし分かれば児童の名前
- 児童の被害状況
などを、「189」の対応者に伝えてください。
匿名かつ通報者が口にした情報は内密事項となるため、周りの目を気にすることなく、安心して利用してください。
通報を行う境界線
先ほども触れたように、「189」は100%虐待が証明されなくても構いません。これはただ事ではないという違和感を感じたら,すぐに通報してください。
「多分大丈夫だろう…」という気持ちが児童の危険を放置する可能性があります。ますは、状況を伝えるだけでも「189」に電話をかけてみてください。
児童相談所の対応
児童相談所は情報の提供があった時間から48時間以内に児童の安全確認を行います。住所・家族構成・名前・通っている保育園などの調査が行われます。
その後は様々な機関と連携し、実際に目で見て児童の安全確認が行われるのです。もし、48時間以内に児童の安全が確認できなかった場合は自宅訪問も行われます。
虐待の通報には義務がある?
実は虐待の通報は、法律により全国民に義務が課せられています。
- 児童虐待の防止等に関する法律第6条(児童虐待に係る通告)
- 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
- 前項の規定による通告は、児童福祉法第25条の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。
- 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第1項の規定による通告をする義務の尊守を妨げるものと解釈してはならない。
もしも周りに、虐待の問題に対して軽視している方がいる場合は、義務が課せられているということを教えてあげましょう。
児童相談所と連携している地域の試み
児童虐待に対する相談が年々増加しているのに対し、児童相談所の対応が追いついていないことも社会問題となっています。
民間や自治体の協力が不可欠となる中で、福岡市では児童相談所とうまく連携し民間で「子育て見守り訪問員」という取り組みが行われています。
平日の昼間は児童相談所の職員が現場に向かいますが,休日や夜間には「子育て見守り訪問員」が出動し、情報などを児童相談所職員に伝え、必要な場合は児童相談所職員も現場に出動するという流れです。
この連携により、児童相談所職員の労力を大幅に削減することができ 児童相談所に寄せられる相談に対して適切な対応ができています。
今回は福岡市を例にあげましたが、その他の地域でも児童相談所と連携しているケースが見受けられます。今後はより、児童相談所と民間、自治体がうまく連携をとっていかなくてはならないでしょう。
子どもの虐待防止「オレンジリボン運動」とは?
オレンジリボン運動は、シンボルマークでもあるオレンジのリボンを広め「子ども虐待のない社会の実現」するために結成された市民運動です。
国や自治体、企業などに子ども虐待のない社会をめざすための活動を行うように促す活動を行なっています。
まとめ:迷った場合は通報しよう
児童虐待は法律だけでは防ぐことが出来ません。そのため国、自治体、民間の連携が不可欠です。
もし周囲で虐待が疑われる状況に出くわした場合は、状況を確かめた上で「189」へ通報してください。
あなたの電話一本で救われる小さな命がたくさんあります。
また、児童虐待に対する活動に賛同していただける場合は、子育て見守り訪問員やオレンジリボン運動の活動のサポートに回ってみるのも良いでしょう。
できれば、ふだんから地域の子ども達や子育て中の親御さんとの交流を深め、子育ての経験があれば、新米のお母さんたちが子育てのヒントを伝えたり、子どもを預かってあげるようなこともできるといいでしょう。
虐待の背景には孤立感、徒労感、ストレスが関係していることも多いので、少しでも子育て中の親御さんがリラックスし、笑顔で子育てができるように協力することも大切です。
そうすることで虐待から子どもを守ることができるかもしれませんね。